『ブッダと龍樹の論理学』 2008/03/01★からぐらの風 #0053 --------------------------------------2008/03/01 ----☆『ブッダと龍樹の論理学』☆-------------------------------------- 日蓮の著作(疑書含む)の中には龍樹の主著である「中論」については、ほぼ二十箇所にその名がみえる。「大智度論」の引用となると魯ひとのカウントでは88箇所におよぶ。龍樹は、日蓮を学ぶ上において無視できない大きな存在といえる。ただ日蓮が直接論じていたのは天台智ギであって、龍樹と四つに取り組んだのは、むしろ、その天台智ギであった。「摩訶止観」の論述は「中論」をベースにしている。 --------------------------------------------------------------☆☆---- 読者からの紹介もあったので、このほど石飛道子氏の龍樹に関する三部作を一気に読んだ。 『ブッダ論理学五つの難問』2005年、講談社メチエ 『龍樹造「方便心論」の研究』2006年、山喜房仏書林 『ブッダと龍樹の論理学』2007年、サンガ 通常、論理学の本など、1ページも読めば睡魔に襲われるものだが、三冊も一気に読めたのは魯ひとの問題意識に適うものであったからで、ひさびさに堪能できた。得るところも多く、魯ひとの日蓮研究に関係する多くのヒントをつかむことができた。魯ひとがつかんだものを言葉にして研究に反映させるまで、まだまだ時間がかかると思うがご報告しておきたい。 魯ひとがこのような論理学の書に興味を示すゆえんは、日蓮がじつに多様な論理を駆使していることに気がついたからである。ところが日蓮の論理についてほとんど研究されていないのが実情である。そういう中で拙著『日蓮自伝考』で日蓮の五義論の構造を解明できたことを自ら誇りに思っている。 ただ、論理学を専門に学んだことはなく、論理に関することを文章化する方法も分からず隔靴掻痒で情けない思いをしてきた。そういう意味で今回は大きな収穫であった。著者の石飛氏には御礼申し上げたい。 また、石飛氏がブッダ、龍樹のものとして提示している論理を通して日蓮をみるとき、なるほどと思われることは少なくない。 一例をあげよう。石飛氏はブッダが一切智者たることを論理的に証明していくのであるが、その論理を応用すれば、今まで見えなかったことが見えてくる。例えば天台や日蓮が龍樹をして「内鑒冷然」と位置づけしている。天台や日蓮がつかんだものを龍樹もつかんでいたが口にしなかっただけだというのである。口にしなかったのに、どうしてそんなことがいえるのか。それは一切智者たるの論理をヒントにすれば簡単に解ける。決して天台のハッタリとは言えなかったのである。 いずれ、改めて論じてみたいと思うが、読者の皆様が先駆けしても文句は言わない。 さて、多くのことを学ばせていただいた石飛氏の三部作であるが、この書を通読して私が抱いた龍樹のイメージは、石飛氏が結論として提示した龍樹イメージとは違ってしまった。 石飛氏は、龍樹が阿含経典を用いてブッダの論理を抽出し、阿含経典をベースにして「中論」をまとめていることをもって、大乗の論師龍樹である前に、その心は「ブッダに帰れ」にあったとする。 それをあえて否定するつもりは毛頭ないが、私には同じ事実をもって、大乗の論師たる面目躍如と映った。なまじ大乗の般若経典をベースにするよりも、阿含経典をベースにすることによって、大乗思想により理論的根拠を与えることになる。 じっさい、龍樹の存在によって大乗仏教の豊かな思想展開があったのは歴史的事実である。(逆に、上座部への影響はほとんどみられない)まあ、私は龍樹の一番弟子は天台智ギ(★豈+頁)であると理解しているので、このように見えるのかも知れない。 --------------------------------------------------------------☆☆---- _/_/^/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/~/_/_/ (ー_ー).。o○ からぐら文庫 : http://www.ginpa.com/karagura/ 魯ひとへのメールは : https://sv21.wadax.ne.jp/~ginpa-com/cp-bin/phpformmail/ ●関連記事
観心本尊抄「諸論師の事は、天台大師云く、天親・竜樹は内鑑冷然たり。外には時の宜しきに適ひ各権に拠る所あり」(s709.02,h650.13,p244.08) これは「摩訶止観」からの引用である。大正蔵経は 「経論皆爾。天親竜樹内鑒冷然。外適時宜各権所拠」(T46-p055a) 2008/03/02追記 からぐらの風・indexへ | |