自立と縁起 2008/02/29★からぐらの風 #0052 --------------------------------------2008/02/29 ----☆自立と縁起☆---------------------------------------------------- 明日からは春三月。近隣の学校から卒業式の案内状が届く。この時期よく語られるスピーチに人の字の成り立ちに関する俗解がある。「互いに依り合って生きているのが人だ。人は一人では生きられない。人間関係を大切に」と云々。あまりよくできた話ではない。この話がまた仏法の無我と縁起の説明に転用されると、なお厄介なことになる。 --------------------------------------------------------------☆☆---- 「我というものは無いんだ(無我?)」と。「ものごとは自と他の相依によって仮に現れてくるものなのだ(縁起?)」と。 この解釈はよくできているようでいて、どこかおかしい。どこがおかしいかというと簡単に言えばゼロにゼロを足してもゼロだし、ゼロに何をかけてもゼロだということである。そんなところに何も発現してくるわけがない。 このあたり、学者さんでも混乱があるようで、「無我」ではなく「非我」だとか、「縁起」は相依関係ではなく、因果関係だと言い換えたりされている。こうなるとサンスクリットやパーリ語が読めず、耳学問や、あちこちの本の読みかじりで生きてきた我々が途方に暮れたり、混乱するのは止むを得ないのかも知れない。 とはいえ、混乱するのはやはり自分に責任がある。耳学問によらず、読みかじりによらず、現実に即して自分で考える努力は必要だろう。梵語の知識は必須ではない(あるにこしたことはないが)。 我々が対話に充実感を感じる時というのは、相手の自我が確立していて、相手の話に実を感じ、触発を受ける時である。実の無い相手と対話しても暖簾に腕押ししているようで空しさだけが帰ってくる。 逆に、こちらの心が虚ろだと、どんな素晴らしい話を聞いても身に入らない。 また、自分と同類で同意見の人、いわゆる仲間同士での語らいには、ストレスがなく、安心感があるが、そこからは新たなものは何も生まれてこない。そんな付き合いばかりだと馴れ合いを生み、自らの自我もいつまでも確立しない。 私は自らの体験からいっても、ベタベタのもたれ合いの人間関係は自分をダメにしてしまうと思う。友人といい、家族といっても一定の距離は必要だろう。子は親父とぶつからねば大人になれないし、親はいずれは子を突き放さねばならないのだと思う。 仏法の「無我」説というのは、本来、我執という幻の自我を捨て、確たる自立した個我を発見することを志向したものではなかったかと思う。 ブッダは繰り返し、「犀の角のように独り歩め」と教えている。天台智ギ(★豈+頁)も、伝教最澄も、日蓮も、皆な「唯一人」歩みだした人であった。それは個我の確立なくして為し得ないことであろう。 いうならば、人類の教師たるブッダや日蓮という確立された個が、良き縁、善知識、種となって、多くの人々の自立を促していったのだと思う。それが仏法の縁起の理法、その実践的な理解だと私は思う。 「縁起」とは、新たなものを生み出し、古くなったものを終息させる理法である。 そういう意味で、私は個我がよく見えない「団結」という古い言葉よりも、一人ひとりの自立を前提とした「連帯」という言葉を好むのである。 日蓮のいう「異体同心」(s829.03,h1389.14,p1463.07)という言葉も「異体」という個我の自立が前提としてあるように思われる。それがあって初めて人は心を同じうし、心を合わせられるのだと思う。自立無き人の「心」には主体性がない。どうして心を合わせられようか。 個我が確立していない人は、また他の個我も認めない。他人の足を引っ張るだけだ。そのような社会は実に住みにくかろう。いわゆる「桜梅桃李」の社会が、もし微温的で同類だけしか認めない社会となるならば、私はご免だね。 さて、人の字の解釈であるが、同じ俗解がゆるされるなら、私には「現実という名の大地に両足を踏ん張って立ち上がった者」と見える。誤解しないでほしい。たとえ両足を失ったとしても、現実という大地には、なお立ち上がることができる。しかし、健康な足を持ちながら、自らの足で立ち上がろうとしない人のなんと多いことか。 (人の字の正しい字解は、漢字字典で調べられたい) ----☆定義☆---------------------------------------------------------- 「個我」 自分が自分であるところ、責任感と主体性の起こってくるところと定義しておきたい。 --------------------------------------------------------------☆☆---- _/_/^/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/~/_/_/ (ー_ー).。o○ からぐら文庫 : http://www.ginpa.com/karagura/ 魯ひとへのメールは : https://sv21.wadax.ne.jp/~ginpa-com/cp-bin/phpformmail/ ●関連記事からぐらの風・indexへ | |