「紙墨もて伝持す」 2008/02/14★からぐらの風 #0046 --------------------------------------2008/02/14 ----☆「紙墨もて伝持す」☆-------------------------------------------- 前45号のつづき。「耳根得道」など、現代に説得力を持つとは思わないが、この発想のもとになったと思われる考え方は『法華玄義』に記されている。さっそく、読者からご教示があった。読者のなかには素晴らしい学究がたくさんおられるので、大変心強く思っている。 この『法華玄義』の当該箇所のいわんとすることを、一言で言うならば、法は言葉によって伝えられるということではないだろうか。 --------------------------------------------------------------☆☆---- 娑婆世界は耳根によるという言い方は、他方世界では、香りを嗅いで(鼻根)悟ったり、柔らかな衣の感触(身根)で悟ったりする世界もあるが、この娑婆世界では声(耳根)や文字(眼根)によって、つまり言葉によって伝えられるとする話を、はしょってしまったところから来ている。 法は変にはしょってしまうと誤解のもとになる。正確に伝えねばならない。また、他方世界(おとぎの世界)との比較など、現代では単なる饒舌に過ぎないだろう。 初学の方には難解だと思うが、法華玄義の文を挙げる。 「一に声を用いて経となす。仏の世に在りて金口もて演説するが如き、ただ声音の詮弁のみ有りて、聴く者は道を得る。故に声を以て経となす。大品に云く、善知識に従って聞く所なり。 二に色を用いて経となす。若し仏、世に在らば、声を以て経となすべし。今、仏、世を去れば、紙墨もて伝持す。まさに色を用いて経となすべし。大品に云く経巻の中に従って聞くと。 三に法を用いて経となす。内に自ら思惟し、心、法と合す。他の教に由らず、また紙墨に非ず。ただ心に暁悟すれば、即ち法を経となす。故に云く、我が法を脩する者は、証して乃ち自ら知ると、云云」(T33-p0776c) 法華玄義の訳本としては、レグルス文庫の菅野博史訳注『法華玄義下』p767、第三文明社刊が入手しやすく、読みやすいと思う。 ここに述べられているように、私たちは言葉を声として聞き、言葉を文字として見、言葉を以て思索して法を会得するのである。そして、仏が生きているうちは、声を直接聞くこともできるが、仏滅後は、紙墨すなわち文字をもって伝えるのである。けっきょく言葉なくしては、法は伝わらない。 不立文字、以心伝心を立てて、法は言葉では伝えられないとしたのが禅宗である。日蓮はそれを厳しく批判した。ここで禅宗と日蓮の優劣を論じる積もりはないが、日蓮義によりながら、根本義は言葉では伝えられないとしたり、特別な人の秘密の相伝に寄らねばならないとするのは理解に苦しむことである。 すくなくとも、ここでは仲間うち、身内でしか通じないドグマによるのではなく、普遍性のある論理により、言葉を重ねていきたいと思う。 「三塵を経となし、此の土に施す。耳識の利なる者は、能く声塵に於いて分別して悟り取れば、則ち声は是れ其の経にして、余に於いては経に非ず。 若し意識の利なる者は、自ら能く心を研ぎ、思惟して決を取れば、法は是れ其の経にして、余に於いては経に非ず。 眼識の利なる者は、文字を詮量して而も道理を得る。色は是れ其の経にして、余に於いては経に非ず。此の方には三塵を用いるのみ。 余の三識は鈍なり。鼻の紙墨を臭ぐに則ち知る所無し。身の経巻に触るるに亦た解するあたわず。舌の文字をくらうに、寧んぞ是非を別たん」(T33-p0776c) 「三塵を経となし、此の土に施す。」三塵とは声、形、思いであり、つまりは言葉のことである。その言葉を経として、この世界に展開していくのである。 言葉じゃなく体験だという人もいるが、その体験を身近な子供に伝えるのにさえ、言葉を尽くさなければその体験は子供に伝わらないのである。 ゆえに日蓮は、題目を唱え(声)、本尊を顕わし(文字)、不滅の戒壇を心に築くことを教えたように私は考える。 あとは耳識の利なる者、意識の利なる者、眼識の利なる者と三種の大きな幅がある。それぞれの個性特質に従ってやっていけばよいのではないか。耳根だけだとか、眼根だけだとかに限定すれば、傷つく人が必ず出てしまう。 --------------------------------------------------------------☆☆---- _/_/^/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/~/_/_/ (ー_ー).。o○ からぐら文庫 : http://www.ginpa.com/karagura/ 魯ひとへのメールは : https://sv21.wadax.ne.jp/~ginpa-com/cp-bin/phpformmail/ ●関連記事からぐらの風・indexへ | |